もののaware

飛騨にありて福島を思う

4畳半で満たされた大学時代

退職まであと1週間。退去へ向けて部屋の掃除をしていると思い出すのが、大学時代に住んでいた学生寮だ。

 

その寮は9畳の2人部屋を、4畳半の1人部屋に改築したもので、設備は机、トイレ、ベッド、ガスヒーター、ミニキッチン、洗面台。風呂は共用。入寮した日はその狭さにびっくりした。

 

しかし、住めば都とはよく言ったもので、手を伸ばせばあらゆる場所に手が届くそのコンパクトさが気に入った。掃除もしやすく、暖房もすぐに効く。寮の友達も、狭さに文句を言う者はあまりおらず、むしろその狭さの中でどれだけ快適な部屋を作れるかを工夫していた。

一時期寮の中で流行ったのが、ベッドを解体してラグとコタツを置けるスペースを作るというもの。これで4人くらい集まることができ、よく鍋をやった。

 

一番最初にできた友人は、学部やサークルよりも、寮の友人だった。自治寮であったため、寮運営は自分たちでやらなくてはならず、自然と寮生同士の距離は縮まっていった。時には一人になりたいときもあったが、優しい先輩や意地悪な(?)先輩と、個性豊かな同級生に囲まれての生活は、にぎやかで、寂しさを感じることはなかった。

夏にはけんじワールドという屋内プールに行き、クリスマスにはパーティーをやり、2月には恵方巻を作ったこともあった。講義の課題が分からなければ誰かの部屋を訪ね、料理が出来たら誰かにおすそ分けもしたりした。

凍てつく寒さの真冬の岩手でも、4畳半の寮生活は暖かかった。

 

就職してから、8畳一間での一人暮らしが始まったが、一人ぼっちの環境と、妙に広く感じるこの部屋に、少し寂しさを覚えた。それをごまかすために、モノをいろいろ置いたりしたが、空しくなっていくだけだった。

 

そんな生活も早4年。退職して木工の勉強を始めると決めたとき、アパート暮らしではなく、シェアハウスで暮らすことを選んだ。

あの大学時代のように、気の合う仲間と、一つ屋根の下で、時に一人で、時に助け合いながら過ごしていければ最高だ。

 

18歳のあの頃、単身見知らぬ土地で、手に持てる荷物だけを持って入寮したあの日は、不安と緊張でいっぱいだったが、心のどこかではワクワクしていたのを覚えている。

 

シェアハウス入居、新生活の始まりまであと1週間。今は、もう一度大学生活が始まるような、少し浮かれた気分で日々過ごしている。さすがにその部屋は4畳半ではないが、8畳の部屋でも満たされる生活が待っているはずだ。