もののaware

飛騨にありて福島を思う

ふたりのDivaと「火の中、水の中」

日本語においては、困難に立ち向かうとき、「たとえ火の中水の中だろうと・・・」といった言い回しが使われる。火と水はいつの時代も恐怖や困難の象徴だったのだろう。

そしてこの表現は、どうやら日本だけのものではないようだ。

例えば英語での表現方法の1つが、「through the +~」で、「~の中で」という意味なる。そして奇しくも二人の偉大なdiva(歌姫)がこのようなタイトルの歌を歌っている。今回は心を震わせ、元気をくれる、そんな「たとえ火の中水の中」な2曲をご紹介したい。

 

1.Through The Fire / Chaka Khan1984年)


www.youtube.com

パワフルかつソウルフルな歌声で「火の中」を表現しているのは、「R&Bの女王」チャカ・カーン。「Through The Fire」は、「I'm Every Woman」や、プリンスのカバー曲「Feel For You」と並ぶ彼女の代表曲の一つで、ゆったりとした情熱的なバラードだ。彼女の声は、まるで全身が一つの楽器であるかのようだ。

Through the fire

Through whatever come what may

For a chance at loving you

I'd take it all the way

Right down to the wire

Even through the fire

たとえ炎の中だろうと

何が待ち受けていようと

あなたを愛せるなら

すべて受け入れる

最後の最後まで

たとえ炎の中だろうと

Right down to the wire とeven through the fire で韻を踏んでいるのが気持ちいい。You Tubeにはたくさんのカバー動画が上がっているが、しっとり調のカバーが多く、原曲のようなガツンと来る声は少ない。もちろん僕はチャカ・カーンの伸びやかでパワフルな声が好きだ。声もストレートなら歌詞もストレート。40年近く前の曲が今でも愛されているのは、普遍的な価値観を歌っているからだろう。

 

2.Through The Rain / Mariah Carey(2002年)


www.youtube.com

ささやくような声でしっとりと「水の中」を歌っているのは、7オクターブの歌姫ことマライア・キャリー。日本では「恋人たちのクリスマス」でおなじみだが、ブラックミュージックをルーツに持つ彼女は、ポップスだけでなくR&Bのヒット曲も多くリリースしてきた。

その中でも「Through The Rain」は、彼女の精神的・肉体的な低迷期に発表された、隠れた名曲だ。

I can make it through the rain

I can stand up once again on my own

And I know that I am strong enough to mend

And every time I feel afraid

I hold tighter to my faith

And I live one more day

And I make it through the rain

この雨だって乗り越えられる

自分の力でもう一度立ち上がれる

そしてそれだけの強さも持っていることも分かってる

恐れを抱いて臆病になるときには

この信念をより強く抱いていこう

そうやって一日、一日、生き延びていこう

乗り越えられない困難はないのだから

 

この曲の中で、rainとは「困難」のこと。make it through + 名詞 で、「~を乗り越える」という意味の構文になるので、厳密には「たとえ火の中水の中」という意味にはならないが、逆境に立ち向かうという意味では最適だ。 チャカ・カーンのThrough the fire とは対照的なウィスパーボイスで、つらい状況にあるマライア・キャリーの心境を吐露しているかのような曲調だが・・・そこはやはりマライア・キャリー。最後の大サビでは彼女らしさが爆発する。

 

ふたりの歌姫が表現する、ふたつの「Through」、気になった方は、ぜひともチェックしてみてくださいね。

 

Through the Fire

Through the Fire

Through the Rain

Through the Rain

  • provided courtesy of iTunes