もののaware

飛騨にありて福島を思う

地域再生シンポジウム2021 in 飛騨 個人メモ

地域再生シンポジウム2021 in 飛騨

広葉樹活用による地域再生~いま地域に求められること~

 

シンポジウムは都竹市長の、「地域おこしとは地域の宝探し」の言葉に始まった。

 

1.基調講演「持続可能な広葉樹林業の経済性を考える~針葉樹と同じ土俵で考えてみた~」

・地域にある広葉樹のスケールや蓄積に応じた用途・販売ルートの開拓が必要。

・製材品の価格低下を、立木価格の低下によって吸収してきた。

・土地の生産性に着目して、経済性を評価⇒その指標が、連年成長量(MAI)。

・広葉樹のMAIはおよそ3.5m3/年ha

・試算① MAI、用材価格、チップ価格、歩留まり、収穫林齢のパラメータを一定の値に仮定した場合(僕の手元に具体的な数字はありますが、メモなので正確性に欠けるため伏せます)、チップ:用材比率=6:4までは赤字、5:5から黒字化の可能性⇒用材比率を上げるべき

・試算② ①の条件から、MAIを変数に取る。チップ:用材比率=7:3とした場合(より現実に近い比率。実際は用材比率はもっと低いかもしれないが・・・)、MAIが5m3/年haまでは赤字、MAIが6m3/年haから黒字化の可能性。⇒地力のある箇所で広葉樹林業を行うべき

・試算③ ①の条件から歩留まりを変数にした場合、歩留まり50%だと赤字、80%から黒字化の可能性。⇒歩留まりを上げるべき

・騙されてはいけないのが、広葉樹は針葉樹と比べて用材単価は高くとも、林分単価は低いこと。

・材積を林齢で除して、地域のMAIを把握してみよう。

 

2.テーマセッション①【森づくり】

 テーマ「皆伐に頼らない持続可能な広葉樹林業の可能性」

飛騨市の取り組み⇒育成木施業:将来木を集中的に育成する。針葉樹林業が面的な施業なのに対して、広葉樹施業は点的。

・若齢林ほど有効で、逆に高齢林では効果は薄いとされる。

・比較的新しい考え方で、賛否両論あるのは承知の上。チャレンジングスピリットで続けていきたい。

滋賀県東近江市の取り組み⇒天然更新:皆伐後、先駆種が繁茂し、その下に有用広葉樹が生えてきている

・下刈り等、保育行為の必要性を感じるが、広葉樹保育行為が補助金の対象外なのが残念なところ。

・販売部門では、中径木の少量・多品種を木工家等へ販売

・ビニールハウス乾燥を行っているが、不十分とのこと。

 

3.セッション②【ものづくり】

 テーマ「ものづくりと地域づくりの可能性」

・オークヴィレッジの取り組み

⇒Neo Woods:生産者、材木屋、木工家が連携した、エシカルな材料調達とマッチングを図る

岐阜県立森林文化アカデミーの取り組み

⇒エゴの木プロジェクト:和傘の原料の一部となるエゴノキを調達する。かつては炭焼き職人がエゴノキの調達を担っていた(炭焼き師がある種の地域材供給のコーディネーターを担っていた)が、燃料革命により炭焼き職人が消えたのと同時に、エゴノキの供給も絶たれた。

・当事者たちではプロジェクトの立ち上げは難しいため、伴走者が必要。しかし、助走をつけてあげることができたら、そこから自走するのは紛れもなく当事者本人。

 

4.セッション③【仕組みづくり】

テーマ「広葉樹の価値を高めるために求められる流通」

・広葉樹はその多様性から、製材品の規格化がしにくい、というかしていない⇒その分マーケットの多様性があることを示している。

・従来の流通は、川上・川中・川下で分断、さらに川中の中ですら分断。

飛騨市の取り組み:そこで、川上から川中までをドッキングした流通へ転換。中間土場を設け、そこで選木仕分けを行う⇒サプライチェーン全体で川下のニーズに対応する。

・価格面・ソフト面両面で、ホワイトオーク等の価格高騰中の輸入材の十分立ち向かえる見込み。

 

5.セッション④【広葉樹による地域再生

 テーマ「広葉樹を活かすために地域に求められること」

新潟県入広瀬の大白川地区:1970年代からブナの間伐を実施。

・おそらく自然保護団体の台頭著しい時代。周りからの批判も多かったことだろう。しかし、大白川生産森林組合の当時の組合長の言葉「ブナに光を当てて健全な森をつくりたい」の言葉は、今では多くの人に理解される考え方。それを理解できる僕らは、その意思を途絶えさせてはならないと思う。

 

6.総括

・広葉樹にかかわるすべての分野を俯瞰すべき。厳しい現実はあるが、だからと言ってできない理由探しはしないこと。

・自分の専門「以外」の場に積極的に立つことが、広葉樹利用のために必要。