もののaware

飛騨にありて福島を思う

被災地との適切な距離感

昨日に引き続き、相馬双葉地域を訪れた感想など。

 

避難指示解除で、ようやく復興のスタートラインに立てた相馬双葉地域。

 

被災地内で被害の大きさを比べてしまうのは不謹慎かもしれないが、自信と津波の被害に加え、原子力災害のあった地域は、正直言って被害のレベルが違う。

 

僕は石川郡から川内村を抜け、常磐自動車道常磐富岡IC」へ向かった。付近で信号待ちをしていた時に道路標識で見かけたのは「夜ノ森駅」の文字。2020年3月10日に避難指示が解除された場所だ。

せっかくだから、見に行ってみようと思って、常磐富岡IC入り口を通り抜け、夜ノ森駅へ向かった。先行する一般車両もいたし、大丈夫だろうと思っていた。よく晴れた、気持ちのいい天気だった。

 

すると、道路わきの待避所スペースに設けられたプレハブハウス、そこで道路誘導員の方が立っているのを目にした。

「スクリーニング場」を初めて目にした瞬間だった。

 

帰還困難区域へと向かう道路の途中途中には、「スクリーニング場」と呼ばれるプレハブハウスが設置されており、一時帰宅の際はで受付をし、防護服を着用の上、9:00から16:00の間に戻り、再びスクリーニング場で持ち物等の線量検査を受けなければならない。JR常磐線夜ノ森駅とそこへ通じる県道、町道は避難指示が解除されたが、周辺の住宅地等はまだ解除されていない。先行していた一般車両は、一時的に自宅へ戻られる方の車だったのかもしれない。

 

このスクリーニング場を通り過ぎ、帰還困難区域方面へと向かったが、区域へと達する前に引き返した。

放射線量に不安を感じたわけではない。自分自身が「悪質な野次馬」かのように感じてしまったからである。

 

現地では、被災された方々や、現地で働く作業員の方々、それを支える行政の方々など本当にたくさんの人が震災以前の生活を取り戻すために奮闘している。自分は被災者でもないのに、復興に向けた現状を知りたいという欲に駆られて、この地域に冷やかしのように踏み入ってしまった。そう感じたのだ。

 

ほかの被災地も含めて、生活基盤が整い、あとは以前のように観光客が来てさえくれれば・・・というような地域には、積極的に訪れてお金を落とすことで支援をしていければと思う。それは間違いない。

 

しかし、避難指示が解除されたばかりの地域は、観光客以前に、まずは自分たち自身の生活を取り戻すところから始まる。しかも、史上最悪と呼ばれる原子力災害と呼ばれる、解のない問題に手探りで立ち向かっている。

改めて言うが、事故後9年がたって、ようやくスタートラインに立ったのが現状なのだ。

 

被災者でない僕たちができること、それは被災地の現状を知り、そこから何かを感じ、未来に生かすこと。でも、復興の段階に応じた、被災地との適切な距離感があることを知った。

 

この地が再び、住民以外の人も受け入れる余力が付いたとき、また改めて訪れようと思う。それまで、違うアプローチで知ること、発信することを続けていこう。

 

夜ノ森駅周辺の避難指示解除のニュースで、そこには美しい桜並木があることが分かった。富岡町を訪れてみたい理由が、一つ生まれた。

 

次回は、JR常磐線の9年ぶりの全線開通から見る、電車のある風景について書いてみる。