もののaware

飛騨にありて福島を思う

Uターン先で見つける出会い

先日、福島の現状とこれからについて考えるシンポジウムに行ってみた。その名も「ふくしま学(楽)会」。

福島の未来について、原発事故の被害が大きかった双葉郡を会場に、出身も肩書も忘れて楽しくディスカッションしようというものだ。

 

参加者は60人位であったが、その参加者がとにかく多彩だった。高校生、大学教授、地元役場職員、建築士、アーティスト、NPO法人代表、教師、原子力関係者等…多様な人々が多様な視点で語り合う場はやっぱりおもしろい。車で片道5時間かけてでも行った甲斐があった。

 

たくさんの意見が飛び交ったが、その中から特に共感した発言を何回かに分けて紹介していきたい。今日はこちら↓

 

「Uターン先なのに知り合いがいない」

 

発言したのは、NPO法人勤務の30代男性だ。

この方は、地元双葉郡の出身で、1度県外へ出たものの、Uターンして双葉郡に戻ってきて、そのときに感じたことだという。

 

全く同じことを、自分も感じていた。福島へのUターンを考え始めたとき、知り合いが少ないことに気づいた。

 

もちろん、高校までのつながりで、今でも連絡を取り合ったり帰省のたびに会う友人はいる。しかし、その多くが同世代のみの繋がりに限られている。むしろ、通っていた大学のある岩手には、同世代だけじゃなく上にも下にも知り合いがいる。

 

これは、中学より高校、高校より大学のほうが、近い価値観を持つ人に会える機会が多いからだろう。

特に大学は、高校までと違って自分の興味のある世界なので、そこで出会う人とは専門分野は違えど根底にある価値観は共有できていることが多い。

私は森林と林業について学ぶ「林学科」に通っていたが、社会科学、物理学、化学、生物学、工学など、分野は違えど皆「自然が好き」「日本の森林、林業を守りたい、そのために役立ちたい」という点で同じ方向を向いていた。

 

また大学は、高校よりも縦の繋がりを持ちやすく、その幅はとても広い。林学科には、仕事を退職して入ってきた方や高校の教師を勤めながら週に何回か大学へ来る方もいた。幅広い年代の学生と同じ場所で学ぶことは大いに刺激になった。

 

そのような、自分の意志で選んだ道で見つけた出会いは、かけがえのない財産だ。その付き合いは卒業してからも続いていくことが多い。

 

一方で、県外の大学へ進んだ者にとって、地元に残る繋がりとは、当然だが高校までにできたものだろう。

その面的な広がりは、Uターン時点では大学よりも狭いのは仕方がない。高校までは、金銭面や行動範囲が限られ、出会いを広げられるチャンスが少ないからだ。

 

しかし、大学で出会った人たちに「価値観」という共通点があるならば、Uターン先で出会う人とは「地元」という共通点がある。福島で出会う人の多くが、生まれたときから持っている共通点だ。たとえ今持っている福島での人脈が弱いものだとしても、そこから広げていけばいい。「同じ価値観」に加え、「同じ地元」という共通点を持つ人との出会いは、必ずある。そんな繋がりがこれからもっと増えていくのかと、考えただけでもわくわくしてくる。

 

そのためにも、もっと色んな所に積極的に顔を突っ込んでいきたいと思っている。ありがたいことに今回の「ふくしま学(楽)会」での出会いもあった。このような、Uターン者が同じ価値観を持つ知り合いを増やせるような機会がもっと増えるといいと思っている。

 

専門分野が違えど価値観の同じ人間が出会ったとき、何が生まれるか。自分は木工という専門分野を携えて、「α」との出会いを楽しみに生きていきたい。もちろん、「地元」という繋がりはなくたっていい。そして自分が考える「同じ価値観」という条件も結構緩めだ。

東北、福島、自然が好き、そういう思いがあれば、それ以外の多様性はむしろ大歓迎だ。