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飛騨にありて福島を思う

木工×針葉樹資源 ③日本の隠された財産

スギなどの針葉樹資源でモノづくりをすることについて。

 

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例えば、「福島県石川郡という地域について」で紹介した、針葉樹資源の町「古殿町」のスギを使って家具や木工品を作れないだろうか、と考えてみたりする。

 

古殿町の森林面積は82%、人工林率は75%にのぼる。林業・木材産業の衰退が全国的に叫ばれる中、古殿町も決して例外ではない。

 

林業活性化を目指すとき、生産コストの削減や、需要拡大など、取り組むべき課題はたくさんある。僕は、モノを作ることで針葉樹資源に新たな活路を見出したいと思っている。小泉元総理が、原発をトイレのないマンションだと言ったが、今の日本林業の課題の一つが、いかにトイレを設置して丸太を流していくかということだ(核のゴミである放射性廃棄物と、スギ丸太を同列で語るのは不適切であるが・・・)。

 

もちろん、仮に僕がスギを用いたモノづくりを実現できたとしても、その消費量は本当に微々たるものではある。でも、それによりスギだけでなく、古殿という町自体に新しい側面を生み出すことに繋がらないだろうか。古殿と言えばスギ、といった具合に。

 

古殿町には、手作りの和菓子や地酒、醸造品など、たくさんの名産品がある。ふるさと納税の返礼品も充実している。しかし、古殿町の豊富な針葉樹資源はこれらに比べて人々の目や手に触れる機会は少ない。

木工を通して、いつのまにか遠くなってしまった人と自然の距離を再び縮めることは、自分の目標の一つだ。スギ木工品の実現は一朝一夕で実現することではないが、古殿にもこんな資源があったんだと、地域内外の人が気づくきっかけを作ることにならないだろうか。古殿町出身ではない僕がこんな大それたことを言うもんではないかもしれないが、同じ石川郡の隣町ということで、町の行方、森の行方を他人事だとは思っていられないのだ。

 

戦後、将来の需要を見越して植えられた針葉樹資源の多くが、収穫期を迎えているにもかかわらず、採算性や需要の観点から収穫されずに残り続けている現状。では拡大造林は失敗だったのか?針葉樹資源は負の遺産になりかけているのか?僕はそう思いたくない。

木を育てて収穫して使うという行為は、野菜を育てるのとは違って、1、2年以内で結果が出るものではない。初めて間伐が行われるのは植えられてから30年後。30年後の情勢を見通すことなんて、誰にもできはしない。むしろ、30年間にいろんなことが起こるという前提の中で、時代時代に合った使い方を掘り起こしていくのが、今を生きる僕たちが果たすべき役割ではないか。

 

スギの学名は、Cryptomeria japonica、日本語で「日本の隠された財産」だ。通直に育ち、軽くて加工もしやすく、成長も早いスギは、木とともに生きてきた日本人にとってまさに宝物であったことだろう。

かつてほどのスギの需要は、今となっては無いのかもしれない。そんなスギに、新しい役目を与えることで、森の循環を未来へつないでいくことこそが、先人からの恩を返すことであると思っている。

 

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「道の駅ふるどの」にある、スギのチェーンソーアート作品



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