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飛騨にありて福島を思う

木工×針葉樹資源 ②木材利用とまちづくり

スギなどの針葉樹資源を木工に使うことについて。

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今回は、自分が知っている「木工×針葉樹資源×地域づくり」の事例について。

 

1.studio Jig(奈良県川上村)

 節が少なく緻密な年輪が特徴の吉野杉。長野県の天竜杉、三重県の尾鷲檜と合わせて、「日本三大人工美林」のひとつにも数えられる。

 その産地の一つ、奈良県川上村で、吉野杉を使った家具作りを通して針葉樹資源の可能性を探っている方がいる。「studio Jig」の平井健太さんだ。

 平井さんは、Free Form Laminationという技術を用いて家具作りを行っている。直訳すると、「無形積層」。吉野杉の突き板を三層にも重ね、自由な成型を行う。

 一般に強度面の問題で家具にはあまり用いられない針葉樹であるが、年輪の緻密さゆえの吉野杉の強度と、平井さんの持つ技術とが合わさり、意匠と強度のどちらも欠けることのない作品が作り出されている。

 吉野川源流の村として、豊かな自然を守り継ぎ、下流に水の恵みを届けることを使命としている川上村。その使命を宣言として全国へ発信した「川上宣言」からは、村の目指す方向とその強い決心が伺える。その中で、特に歴史ある林業を中心とした村おこしに取り組むにあたって、平井さんの存在は欠かせないものになっている。

 そんな平井さんの理念は、家具には不向きとされてきた針葉樹の概念を変えること。吉野杉を始めとした針葉樹資源の新たな可能性を感じずにはいられない。

 

2.木工房ようび(岡山県西粟倉村)

 人口約1,600人、森林率95%の村、岡山県西粟倉村で、ヒノキを中心とした針葉樹資源を使った家具作りをしている場所がある。「木工房ようび」だ。

 ようびは、「やがて風景になるものづくり」をコンセプトとしている。作り手の顔や、家具が生まれた背景を作品に乗せて発信し、林業従事者、木工職人、お客さんを繋げ、新しい未来の風景を作っていこうというのが、代表の大島正幸さんの理念だ。

 書籍の中で大島さんは、とある機会に西粟倉村でヒノキ林を見て、針葉樹資源をどうにか有効利用できないかと思ったと記している。ようびで作られるヒノキの椅子は、強度、デザイン、座り心地に一切妥協はない。

 西粟倉村は、豊かな人工林資源を先祖から受け継いだかけがえのない財産と捉え、適切な手入れを進め、未来に残していこうという「100年の森林構想」を掲げている。村の共通の財産である針葉樹資源を、家具という形で人々の生活の中へ溶け込ませる木工房ようびの活動と、西粟倉村の取り組みから目が離せない。

 

 上記の例に共通して言えることは、自治体が森林資源の利用に対し明確なビジョンを持っていることだ。特に、森林資源は農作物や水産物と違い、はるか遠い昔から何世代にもわたって育んできた村民共通の財産であること、自分たちの生活を多方面で支えているものであること、そして受け継がれてきたはずのサイクルが今危機に瀕していることを、村自体がはっきりと理解している。

 このような中で、「川上宣言」や「百年の森林構想」が生まれ、村全体で森林を手入れして利活用を図り、未来へ守り育てていこうという土壌が出来上がっている。

 森林資源の管理や利活用が課題の自治体は全国にたくさんあるが、これだけはっきりとしたビジョンを描けている自治体はどれだけあるだろうか。こんな場所で自分もモノづくりをやってみたい、そんな自治体がもっと増えてほしい。

 

 諸先輩方の取り組みを前にして、霞んでしまうようなことかもしれないが、次回は自分が漠然と考えている、これからやってみたいことを書いてみようと思う。

 

 

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