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飛騨にありて福島を思う

薬師岳


北アルプス薬師岳(2,926m)へ、大学時代の後輩と登頂。薬師岳は、6年前に大学のサークル活動で登ろうとして悪天候で断念した山。今回はそのリベンジ的な登山だった。

 

当時の山行を思い返すと、パーティーメンバーには辛い思いをさせてしまったと反省するほかない。自分の中でもやもやする気持ちを整理しようと思って、単独で行こうと思った山だったが、ありがたいことに当時のメンバーの一人である後輩が付いてきてくれることになった。彼には本当に感謝したい。

 

今回は、薬師岳直下にある薬師岳山荘で宿泊するコースにした。6年前の夏は薬師岳山荘よりさらに下にある薬師峠キャンプ場で幕営し、翌日登頂し下山までする予定だった。しかし、悪天候により沢が増水、さらに縦走5日目最終日ということもあり、無理を避けて登頂せず下山とした。この縦走で、いわゆる日本百名山を2つ~3つほど回れる予定であったが、結局1つも登ることが出来なかった。

 

この判断は、間違ってはいないと思っていた。悪天候下での山行は全くもって面白くないと思っていたし、翌日くらいに増水した沢での死亡事故も起きていた。しかし、下山し大学に戻ってから今に至るまで、あの時薬師岳に登っていれば、あの5日間は少しは変わったんじゃないかかと、メンバーにとって行ってよかったと少しでも思える山行になったんじゃないかと後悔し続けてきた。そんな思いを抱えながら、朝7時に登山口の折立を出発した。

 

前回はお盆休み付近の山行であったが、今回は10月。少し肌寒いが、歩いていると体感的には丁度良く、苦労せずに14時前には薬師岳山荘へ着くことが出来た。この日山荘は営業最終日であり、薬師岳と草紅葉を求めた登山客で満員であった。

しかし満員と言っても、コロナ禍のため定員はいつもの半分程度、館内はマスク着用、食事も少人数での3回転制であった。寝床も、一人一人のスペースが仕切り板で区切られていた。まさか山小屋でマスクをする時代が来るとは思わなかったが、正直少人数で快適だとも思った。

 

到着後はそのまま山頂アタックが可能な時間ではあったが、山荘についた安堵感と、短時間睡眠&長時間運転による睡魔に耐えきれず、夕方まで2時間も山荘で眠ってしまった。そして残念なことに、その間に薬師岳周辺は晴れ渡り、多くの登山者が頂上を目指したようだった。悔やまれることではあったが、一足早く目が覚めた後輩が僕を叩き起こしてくれたおかげでくっきりと澄み渡る空と美しいシルエットの稜線を捉えることが出来た。単独行だったら完全に寝過ごして晩御飯すら遅刻していたところだった・・・

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薬師岳方面。頂上はさらに先。

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手前に雲ノ平。さらに遠くに槍ヶ岳

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黒部五郎岳





夕食後は遠くに沈む夕日と、富山市街地の夜景を堪能した。2,700m地点は、日没後はさすがに寒かったが、それを吹き飛ばすほどの息をのむ風景だった。後輩は、苦労して登った者にしか味わえないご褒美たと言っていた。改めてその通りだと思った。

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この薬師岳山荘、館内はすこぶる快適で、全く寒さを感じることは無かった。おかげで疲労も取れ、次の日に備えることが出来た。

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ご飯味噌汁お替り自由。フルーツポンチは営業最終日のサービス。

翌朝、5時に山荘を出発し、薬師岳山頂を目指した。ご来光に合わせて登り始めたが、残念ながらガスと強風でお世辞にも快適な登りとは言えず、山頂での滞在時間は短かった。それでも、昨日見えた薬師岳の姿を思えば、これ以上のことを望んではいけないなと思えた。それくらいに、北アルプスの風景は僕の目に美しく、たくましく映った。

 

下山後はふもとの亀谷温泉に入り、市内でちょっと良い寿司屋で腹を満たし、富山湾で水面にタッチした。正真正銘、2,926mを上下したことになった。

 

さて、寿司を食べながら後輩と反省会をした結果、6年前の下山の判断は正しかったのではないかという結論に至った。薬師峠キャンプ場から薬師岳山荘までの登りと、薬師岳山荘から頂上までの登りは、意外と険しくキツかった。6年前のコンディションでは、気力体力ともに満足に登ることは出来なかったと思った。これで当時のメンバーに許してくれと言うのはまだ申し訳なさが残るが、自分の中で少しばかり答えが出た気もしている。

 

そしてやっぱり山はいいもんだと思った。これから山は紅葉し、冬のシーズンになっていくが、一人でも誰かとでも、まだまだ楽しみたいと思う。ひとまずアルプスよ、また来年まで!

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