もののaware

飛騨にありて福島を思う

木のモノづくりと広葉樹資源の行方

 昨年のことではあるが、製品の材料である幅ハギ板(幅の狭い材を何枚か並べて接着して、大きな1枚の板にしたもの)の中身が変わってきたと感じた。今までは3枚ハギから4枚ハギだったものが、4枚ハギから5枚ハギ、果ては6枚ハギまで登場してきたのだ。加えて材の見た目もかなり悪い。まあ天然木とはそういうものだけど。

 話によると、良質で幅の広い材が手に入りにくくなってきたとか。なんと。針葉樹資源は(山には)吐いて捨てるほどあるのに、広葉樹資源はピンチなのか?木のモノづくりに携わる者として、そして林業の世界に携わってきた者として、広葉樹資源の行方は気になるところだ。

 日本の森林に関するデータは、針葉樹に関しては豊富にあるものの、広葉樹資源に関するデータは乏しいのが現実だ。まあ家具やクラフトづくりが広葉樹資源の消滅の危機を左右するほどの消費量を生み出すかどうかは疑問ではあるけれど、確かに長い目で見れば広葉樹資源は手に入りにくくなるのではないか。

 例えば、国有林からは大径の広葉樹はあまり出てこなくなってきている。丸太の生産コスト低減を目指す方針の中、生産条件の良い地形に大径の広葉樹など生えてはいない。それもそのはず、生産条件の良い場所は収穫することを想定して植えられた「作物」なのだから比較的収穫しやすい場所に植えられている(必ずしもこの限りではないが)。そして植えられた木のほとんどは、戦後の国策「拡大造林」によって植えられたスギ、ヒノキ等の針葉樹である。

 一方、広葉樹は殆どが天然林で、人間の営みとは全く関係なく生えている。登山をする方だったら、山岳国立公園内に人の腕では抱えきれない太さの立派な広葉樹が生えているのをよく見かけることだろう。あのような場所の木を狙って伐って運び出すことの難しさは想像に難くない。費用、技術、法律など様々な障壁があるからだ。加えて広葉樹を保護し、針広混交林へ誘導しようというのが林野庁の方針だ。国策は広葉樹の積極的利用と言う段階にはないのである。

 ゆえに広葉樹は資源量的には豊富かもしれないが、生産量的には少ない。世に出回っている国産広葉樹は上記の障壁を潜り抜けた選ばれし者(?)なのである。どちらかと言うと、ヤマ寄りの広葉樹は手に入りにくくなってきた一方で、里寄りの広葉樹によくお目にかかっているというところだろうか。

 ところで、その猛者たちの用途は何かというと、なんと9割以上はチップである…。どのぐらいの太さの広葉樹が毎年どのくらい丸太になっているのか分からないが、例えるなら捕えたマグロの9割以上をツナフレークにしているようなものである。やはり家具・クラフトとしての使用量は少ない。まあ確かに広葉樹は針葉樹と違って、真っ直ぐではないからトロの部位は少ないのは仕方ない。だって育てようと思って育てた木じゃないもんな!

 今後は大トロ級のマグロの流通量は減っていき、ツナ級のマグロが増えていくかもしれない。いや、ツナを出すぐらいなら伐ること自体割に合わないから伐らなくなるのかも。そうなると大トロ級の用材は手に入りにくくなり、必然的に家具・クラフトの価格も上げざるを得なくなる。そうなるとその家具を手に入れられる人はだんだん限られてくる。自分のやるモノづくりってそれでいいのか・・・?

 

 考えすぎではあるが、循環資源でモノを作る以上はその流れを意識せずにはいられない。近年話題になっている「広葉樹林業」なるものも気になるところだ。

 ひとまず自分にできることは、家具を作った端材で小物を作るという、マグロ1匹無駄にせず使い切る段階的利用(専門用語でカスケード利用という)をやっていくことだろうな。

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