もののaware

飛騨にありて福島を思う

感謝の正拳突き…?

木工で失敗する原因はたくさんある。気のゆるみ、慢心、過度の緊張など・・・

 

ここ最近で言えば、ノミ砥ぎに失敗した。

 

ノミは「裏押し」という作業を行ってから、「鎬(しのぎ)の砥ぎ」に入る。この裏押しという工程が、自分の感覚で割と簡単に、綺麗にできてしまったため、鎬の砥ぎも自分の感覚でバーッとやればいい具合に仕上がると思っていた。よって、職人さんが砥ぐ姿の見よう見まねで、テンポよくシャッシャと砥いでいく。

 

しかし、自分の思いとは裏腹に、平面を保たねばならないはずの鎬面はどんどん丸くなっていく。最終的には工房のスタッフさんに直してもらった。初心者なのだから、何でも上手くいくわけがないのは分かっていたが、全部自分一人の感覚で仕上げてやろうと思っていた分、とても悔しかった。いい勉強になった。

 

結局どうすればよかったのかというと、鎬面と砥石とが平面で接していることを感じ取りながら、ゆっくりやってみれば良かったのだった。

 

何においてもそうだ。結局のところどんなに時間がかかろうと、初めての事ならば、一個一個の動作を確認しながらゆっくりとやっていくのが一番の近道だ。そのゆっくりしつつ確実な流れを、何度も何度も確実に繰り返していけば、気付かないうちに自然とスピードは上がっていく。

 

そういえばこれは漫画「HUNTER×HUNTER」の「感謝の正拳突き」と同じではないか。

自分の肉体と武術に限界を感じた武術家・ネテロは、自分を育ててくれた武道に感謝の意を表し、その恩を返すために、山にこもって1日1万回「感謝の正拳突き」を始めた。

気を整え、拝み、祈り、構えて突く。当初は1回あたり5~6秒、1万回やるのに18時間を要した。

しかし、2年が経ったころに気付く。1万回突き終えても日が暮れていない。知らず知らずのうちに付きの速さは増していた。ついには所要時間1時間を切る。山を下りたとき、彼の正拳突きは音速を超えていたのだった・・・

 

音速でノミを砥ぐことは出来ないが、ゆっくり丁寧な砥ぎを繰り返すことで、いずれ職人の砥ぎに近づけるのだろう。急がば回れ、木工修行に近道は無い!

 

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