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飛騨にありて福島を思う

説得力のある登山自粛要請を望む

2020年4月20日付で日本の山岳4団体(注1)が、山岳スポーツの自粛要請文を共同で出した。それから約1か月が経過。緊急事態宣言の解除を受けて、山岳4団体は改めて山岳スポーツの自粛に関する声明文を発表した。

(以下、山岳4団体からの声明文(2020年5月18日付))

https://www.jma-sangaku.or.jp/information/detail.php?res_id=1589783127-297728

 

内容を要約すると、

「緊急事態宣言の続いている都道府県での山岳スポーツは、引き続き自粛をお願いします」というものだ。

ただし、5月25日付で、全国的な緊急事態宣言の解除が表明されたので、近いうちにまた同団体から声明文が出ることだろう。

 

今回言いたいことは、声明文の文章力について。

4月に文章をを出した時から気になっていたのだが、なぜこの団体の文章からは「登山によりケガをする⇒救助隊や医療機関に余計な負担がかかる、および関係者への感染リスクが高まる」という大事な部分が抜け落ちているのだろうか。

確かにこんなことはわざわざ書かなくとも、少し考えれば誰でも分かることではあるのだが、これが登山自粛を求める最大の理由なのだから、書かない理由がない。書いてあるのとないのとでは、自粛要請文としての説得力が違う。4団体も集まって誰も指摘しなかったのだろうか・・・

 

4月当初の自粛要請文はもっと不思議な文章になっている。

 

「都市を離れ、清浄な空気と自然を求めての登山やクライミング行為は、出先の方々への感染を広め、山岳スポーツ愛好者自身が感染するリスクを高めます。」(4月20日付文章より抜粋)

 

「3密状態が発生しやすい都市部を離れ、オープンエアーな自然を満喫することは感染につながる」という、摩訶不思議な理論を述べる文になってしまっている。4団体さん、あなた方が言いたいことの肝はそこではないはずだ。

 

登山をしたい人はたくさんいて、皆がそれをぐっと我慢している。山小屋を営業されている方々は、ただでさえ厳しかった資金繰りに加え、コロナウイルスという前代未聞の困難に直面している。山小屋の助けになればと、クラウドファンディングも展開されている状況だ。

もしかしたら、潰れてしまう山小屋もあるかもしれない。心の中では、誰だって小屋に泊まって応援したい気持ちだろう。そんな状況下において、苦渋の決断で自粛を要請するのだから、何のための自粛なのか、自粛しないと誰がどのような状態に陥る恐れがあるのかを明記した、説得力のある文章にしていただきたい。

 

ふもとでは新緑がまぶしく、標高の高い地点でも少しずつ雪解けが始まっている。早く以前のように、誰の目も気にすることなく山を楽しむことが出来るようになってほしい。

 

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2019年8月 福島県側から飯豊本山へ続く稜線

 

(注1)山岳4団体:(公社)日本山岳・スポーツクライミング協会、日本勤労者山岳連盟、(公社)日本山岳連盟、(公社)日本山岳ガイド協会)

 

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