もののaware

飛騨にありて福島を思う

木を見て、森も見る


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今日は全国的に暑かった。ここ岐阜県高山市も最高気温31度と真夏日を記録した。何日か前はダウンを着て寝ていたというのに・・・住んでる家が寒いだけ?

 

そんな今日は、工房近くの山の整備をした。木工製品を作る者として、材料を産み出す森を無視するわけにはいかないというわけだ。

 

山の整備と言っても、今回は工房の敷地内の空き地に生い茂っていた雑木や枯死木の処理。生えていたのは主にハンノキ。水気のある土を好む落葉広葉樹だ。樹高にして7~8m、直径にして14cm程度だったので、手鋸で処理した。

 

何人かのグループに分かれ、追い口、受け口を作って、安全な方向に倒す。玉切りした材は工房の薪として使い、枝葉は山の斜面へ筋状に置く。大学時代も、前職時代も何度もやってきたことだが、程よい疲れと楽しさを感じる。もちろん、これよりはるかに大きい気を何百本、何千本と伐倒、造材する林業事業体の方々の前では言えないことだが、要するに外で体を動かすことは気持ちのいいことだ。

 

工房の同期の中には、伐採作業をしたことがある人は少なく(というか僕くらいしかいなかった)、新鮮な体験になったようだ。

そもそも木に関する知識がほとんどないに等しい者もいるが、そんな人が集まって一つの場所でモノづくりを学んでいるなんて、とても素敵で面白いことじゃあないか。木工を志すに至るきっかけは人それぞれ違っていて、歩んできた道も一人として同じではない。僕が僭越ながら樹木や林業の話をする代わりに、僕の知らない世界を見せてくれるこの同期のみんなと、2年間しっかりと切磋琢磨し、2年後以降も付き合っていきたい。

 

しかしいくら野外作業が気持ちいいとはいえ、真夏日の午後2時を回るとさすがにバテテきてきた。午後からは敷地内のモミの木を間引きしたが、このモミが厄介で、ハンノキと比べて樹高も直径も大きく、ヤニが手鋸の刃にべっとりと付着して切れ味を落とす。炎天下のハンノキの処理で疲弊した僕らにはハードな作業だった。

それでも休憩ごとの冷たい飲み物やアイスで体をいたわりながら、約0.5ha分の整備を完了した。林業初体験の同期は土と日焼けで黒いんだか赤いんだかよく分からない顔つきに。ひとまず荒れ放題だった空き地は綺麗になった。この場所を今後どうするかはまたの機会に。

 

整備が終わった後、工房の長の方と同期の何人かで敷地の裏山へ。昔作ったであろうツリーハウスから町を眺める。いつのまにか日も傾き、涼しい風が吹き抜けていた。

木を見て森を見ずという言葉があるが、僕ら木工を志す者が心掛けるべきは、木を見て、森を見る、いや、順番的には森を見てから木を見る、が正しいのかもしれない。木工が循環型社会の構成要素の一つだということを改めて意識できる一日だった。

暑くてとても疲れたが、こうしてブログを書きつつ飲む缶チューハイはとてつもなくうまい。来月の活動でもしっかり働いて、またうまい酒を飲もう。