②ベクレル・シーベルト〜福島県民がイチから原発の勉強をしてみた〜
ある福島県民がイチから原発や放射能について勉強する回の第2弾。
第1弾はこちら↓
今回は「ベクレル」と「シーベルト」だ。
原発事故を気に一気に知れ渡った言葉だろう。自分自身もそれまで聞いたこともなかった。しかし、「○○ベクレル」「○○シーベルト」といった数字の持つ意味がイマイチよく分からなかった。
少々長いが、結論として福島県産の食べ物の安全性を示す内容になっていると自負している。
まずはベクレルから理解してみることにする。
ベクレル(Bq)とは、「放出される放射線の量」を示す尺度だ。
ベクレルが大きいほど、たくさんの放射線が放出されることになる。
注意が必要なのが、ベクレルが大きいほど人体にとって危ない!…とは限らないことだ。
放射線の種類は次のようにいくつかがあって、その透過性はそれぞれ異なる。
アルファ線…紙一枚すら透過できない(弱い)。
ベータ線…紙を透過するが、薄い金属板で遮ることができる。
ガンマ線・エックス線…薄い金属板は透過するが、鉛の板で遮ることができる。
中性子線…鉛の板を透過するが、水やコンクリートで遮ることができる。
さらに、放射性物質によって、放出される○○線は異なる。
おそらく事故後最も有名になった放射性物質といえば、放出された放射性物質のなかで最も量の多かった「セシウム」と、汚染水のニュースでよく聞く「トリチウム水」のトリチウムだろう。
(トリチウム水についても後日まとめるつもりだ。)
セシウムは、ベータ線とガンマ線を出す。一方トリチウムはベータ線のみ。
ガンマ線よりベータ線のほうが透過性が低い。つまり、おなじ100ベクレルでも、セシウムよりトリチウムの方が、人体への影響は弱いと言える。
具体的には、トリチウムの人体への影響度はセシウムの1000分の1だ。
(この影響度が後述する「シーベルト」である。)
ゆえに、今現在、食品中の放射性物質の基準値(ベクレル/kg)は、より影響力の強い「セシウム」基準で設定されている。セシウムの基準値をクリアしていれば、トリチウムやその他の放射性物質の基準も当然クリアしている、という考えだ。
では、その基準値とはどれほどのものか。
現時点で厚生労働省が定めている基準値(セシウム基準)は以下の通りだ。
水…10ベクレル/kg
食品…100ベクレル/kg
そして、この基準値を下回ったものだけが、世に流通している。
ちなみに、この基準値の根拠とは
「食品からの被曝量が最大でも年間1ミリシーベルト以下」
となることだ。
現在日本では、被曝量年間20ミリシーベルトが避難の基準となっている。
(国際的には、年間20〜100ミリシーベルト内で基準を定めることとしていて、日本はその中で一番厳しい数字を採用している。)
ちなみに私たち日本人は、原発事故関係なく、年間平均6ミリシーベルト被曝している(内訳:自然被曝2ミリシーベルト、病院でのCT検査4ミリシーベルト)。
年間20ミリシーベルトの基準まで、あと14ミリシーベルトも差がある。
仮にこの14ミリシーベルトを食品で被曝するとしたら、どれほどの量になるのか。
食品基準値最大のセシウム100ベクレル/kgの食品を1kg食べた場合、被曝量は0.0013から0.0019ミリシーベルトとされる。端的に0.002ミリシーベルトとしよう。
14(mSv)÷0.002(mSv/kg)=7000kg=7トン
どれだけ途方も無い数字かお分かりだろうか(ただこの計算は参考程度で…間違ってたら教えて下さい)。
更に言おう。
令和元年度(1月31日時点)の福島県産の農林水産物の検査で基準値を超えたものは、14,027件中わずか4件のみ。もちろんそれは流通していない。
はっきり言おう。
福島県産のモノは完全に安全である。
そしてかなりヤバ目のアンケート結果を示そう。
2019年に、東京都民に福島県産の食品を食べるのをためらうかとアンケートをとったところ、22.6%が「ためらう」と答えている。
ちなみに2年前のアンケートでは26.3%。未だにこれだけの人が福島県に対してマイナスなイメージを持っているのだ。
↓こちら(福島民友新聞社)
https://www.minyu-net.com/news/sinsai/news/FM20191129-437757.php
人の心に染み付いたイメージを取り払うことの難しさを考えさせられる。というか、この人たちの考えが変わる日は来るのだろうか…
何度も言うが、人間は目に見えないもの、知らないものに対して恐怖を覚える。それを克服するための手段が、「知ること」なのだ。
「知ること」をやめて蓋をすることは簡単だ。しかし、それで覚えた恐怖は一生付いて回る。
まだまだ、福島県民の挑戦は続いている。
あと4日で、震災から9年だ。