教育機会が人を呼ぶ
少子高齢化や過疎化の影響で、多くの高校が統廃合の波にさらされている。福島県もご多分に漏れず、県教育委員会の「県立高校改革前記実施計画」の中で、複数の高校の統廃合が計画されている。
これに関して、日頃から福島県移住を企てている私が思ったことが、高校の無い場所に人は来ないということだ。
自然に囲まれた環境で子育てをしたい!そう思って移住をする子育て世代が増えてきた。
彼らが思う良い子育て環境の条件として、待機児童がいない、24時間対応の病院があるといったことだけでなく、通える高校の選択肢があるかどうかも重要だろう。
各高校には特色があり、卒業後地域の産業を担うプロフェッショナルを育てる高校もあれば、難関大学への進学を目標とする高校もある。
一旦入学すれば、目標実現のためのカリキュラムに沿って3年間過ごすから、高校選びの時点でその先の将来も決まってくると言っても過言ではない(そもそも中学生の時点で将来像をある程度見据えろというのは無理があると思うが…個人的には、もっと高校時代に進路選択の「遊び」があってもいいと思っている)。
ともなれば、将来子供にできるだけ多くの選択肢を残すために、いくつかの高校に通える可能性のある場所に移住したいと思うことだろう。
では、高校の選択肢が豊富に用意されている場所とはどのような場所か。当然、都市部になる。
例えば、私の通っていた県南地域で言えば、地域の中心をなす白河市に複数の高校がある。
難関大学進学を目標とする高校や、地域の産業の担い手を育てる高校、その中間に位置する高校といった具合に、自分が望む将来像に合わせて高校を選ぶことができる。県内各地方の中心をなす福島市や郡山市、会津若松市、いわき市周辺も同じように高校の選択肢は多い。
たが、高校選択肢の少ない地域も多い。なぜなら、進学校は都市部に集中する傾向にあるからだ。
南会津町を中心とする南会津地域は、震災と原発事故の影響を大きく受けた相馬・双葉郡地域を除いて、福島県内で最も人口減少が進んでいる地域だ。
地域内には、田島高校と南会津高校、只見高校の3校があり、いずれの高校も、大学進学というよりは地域を担うリーダー育成といった方針を打ち立てている。
では、この地域で育ち、大学進学を目指す意欲のある若者は、どうしたら良いのか。地元の高校に通いながら強い意志を持って勉強を続けるか、下宿をして都市部の高校へ通う必要があるだろう。もちろん、本人のやる気次第で可能性はどこまでも広がっていくが、どちらを選んでも、都市部の高校生と比較して不利な条件での学生生活を強いられる。
となれば、子供のためになるべく選択肢の多い場所で子育てをしたいという世代は、より選択肢の多い都市部や、そこに隣接した地域を移住先として選ぶ可能性が高い。教育面での条件が不利な地域は、若者や、子育て世代を呼び込む上で1つ余計なハンデを背負っていることになる。
断っておくが、私は、南会津地域が大好きだ。豪雪が育むブナ原生林の残る只見町、尾瀬ヶ原を始めとする大自然とそれが育んだ文化が残る檜枝岐村、大内宿や温泉街といった情緒あふれる町並みが残る下郷町、登山や釣り、スキーで楽しめる四季折々の大自然や祇園祭の文化が残る南会津地域中心の町、南会津町。この地域を訪れるたび、自分が生まれた場所のように落ち着き、カネとモノに溢れた世界で凝り固まった心がほぐれていくのが分かる。子供の情緒を育む上で、これほどいい環境は他に無い。
この地域で、たくさんの子供たちが育っていってほしいと願っている。そのためには、多様な教育機会を用意しておくべきだ。
前述した田島高校と南会津高校は、高校再編計画で統合されて1つの高校になる予定になっている。ますます教育機会の選択肢は失われていく。
新たな高校には、地元を担うリーダーを育てるカリキュラムだけでなく、さらに上の教育機関を目指せるカリキュラムの両方が備わってほしいと願っている。多様な教育機会が多様な人材を育む地域には、その空気を求め多様な人が集まってくるだろう。そして、今まで思いもしなかった新しいアイデアが、地域に新たな価値をもたらすかもしれない。
選択肢のある地域に、次世代は集まる。教育機会の有無から移住定住について考えてみるのはどうだろう。
↓子供と生き方の多様性について考えました